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2013.10.17 | Voice

今の瞬間は続かない。だから記憶として留めておきたい。

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映画監督の森大樹さんに「オクターヴ」のプロダクツを送ったところ、報告がてらにとこんなメールが届いた。

森です。
ストラップとトート届きました。
結構しっかりした作りですね。
デジカメよりもフィルムカメラの方が似合いそうです。
久しぶりに古いカメラを引っ張りだしました。

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映像集団「nostos-algia」の主宰として、いつもはムービーで撮ることを生業とする森さん。使う機材は、だんぜん機動性がモノをいう。 「現場でどれだけ仕事ができるかが、何よりも大切です。カメラバッグだとしたら、ものがすぐに取り出せること。ぶつかっても壊れたり、傷つかないこと。持っていても邪魔にならないこと。余計なものがついているといらないって思うし、そこは徹底していますね」
ムービーは仕事としての道具なのに対して、スチールのカメラは、そもそもの向き合い方がいささか異なる。「もっぱら家で使っていますね。特に娘の存在は大きくて、子どもが産まれてから、写真をつとめて撮るようになりました。1日で150~300枚撮ることもあります」母親と娘がいる風景を遠くから眺めて、それを撮ることが多いという。 「娘は正直、どう扱っていいか分からない。カメラがあることで、娘との関係性を保っているのかもしれません」
 これがフィルムカメラとなると、さらに趣味の領域へ。 「たとえば、家の玄関にいつも置いてあって、来たお客さんとかを撮る。時間をかけて少しずつ、撮りきったら現像する。カメラがかわいいと「なにこれ?」「一枚どう?」的な感じで、コミュケーションのツールとしても役立つ。これも、フィルムの使い方のかたちだなって」

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ふだんから撮る。 近い人だけを撮る。ゆっくりと撮る。あいまいに撮る。 こういう行為は森さんにとって、とても、とても大切なこと。
「今の瞬間って、続かない。おじいちゃんが10年くらい前に亡くなった時、そう改めて思ったんです。いつまでも続かないなら、その瞬間をとっておきたい。記憶として留めておきたい。そのための一瞬を残すのが、僕ができること」
 そう。 記録ではなく、記憶を残す。
「デジカメは、記録に近いですよね。撮ればすぐに、数秒で確認できる。それにデジタル用のレンズって、ピントがすぐに合うので、すっきりとした絵が撮れるんです。ところが昔のレンズは、そこまで精度が高くなくて。光が入った時に乱反射したり、コーティングが悪くなる。でもそこがいいんです。記憶の中の世界を表現したい時、使うことがあります」
たとえば、と指したオリンパスのカメラ。「実はこれ、父親のカメラなんです。僕が生まれた時、出産祝いのお金で買ったものみたいで。このレンズをふだん仕事で使ってるカメラに付けて、撮るんです。 そうすると、味わいのあるいい絵が撮れるんです」
「なつかしさとぬくもり」をテーマにものづくりを行う「nostos-algia」。 遠い日の、心の奥にたぐりよせひた隠していた、痛い気持ち。 それを甘くて、酸っぱくて、ほろ苦いものに変えてくる。森さんの映像には、そんな力がある。

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そして、オクターヴのプロダクツは、そんな気持ちをくすぐられるものだったという。「ストラップを見た瞬間、デジカメよりもフィルムカメラにつけたいと思いました。特別なものにつけたいと思った。ものづくりの大切なことがここにある。付けてみると、当たり前ですけどしっくりきます。質感が合うんでしょうね。鉄の感じと、しっかりとした革の感じ。時代を経て来たもの、歴史があるもののほうが合う。あとずっとカメラを下げていると、けっこう首にきちゃうので、そういうケアがなされているところもいい。あと絶妙な長さとか。留め具とか、ステッチの細かさとか。 使ってみると、どんどん気付くことがあります」

またトートバッグにおいては、まずはその使い勝手に話がおよんだ。
「カメラを常に出せる。すぐに出せるというのはすごく重要なんですが、さらに僕は荷物持ちなんて、サイドポケットが細かくついていたり、あと深さがあるのがすごくいい。そんなに出さないやつは下にして、カメラのインナーバッグごと上に持って来たい。インナーバッグには、そういうセパレートできる意味もあるんでしょうね。あと、フラップ。ふつう1個しかついてないのに、3個も!ついているのが重要。僕はレンズの上に置いちゃうので、傷付けずにすむ。つくづくこれを作った人は、カメラが好きなんだなと思います」
ただなぜかカメラ好きであることと、バッグ好きであることは、両立しないことが多い。 だからカメラバッグには、色気がないとも。
「カメラバッグって、もともとのなりたちが機能ですからね。ただ僕はバッグも大好きなんで、デザイン性も気になる。そういう意味でこれは、すごくバランスがとれてると思います。 ファスナーの感じとか、材質の選び方とか、カメラが好きなだけじゃないなって。モノも好きじゃないと。正直、今はまだよそよそしい感じがありますけど、時間を一緒に過ごせるなという手応えがあります。 長いこと、いい関係を気付いていけそうな気がする」

取材・文:山村光春(Bookluck)

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森 大樹
Hiroki Mori

1979年、東京生まれ。映像作家・撮影監督としてnostos-algiaを主催。
アメリカ・サンフランシスコにて映像とVFXを学ぶ。ドキュメンタリータッチの作風で、映画などの撮影からCM・コンセプトムービーやミュージックビデオの演出/撮影を行う。またVFXスーパーバイザーとして映画やCMなどの特殊映像の編集にも携わる。VFX代表作 「NHK坂の上の雲」「東京タワー」「今度は愛妻家」「男たちの大和」など。その他ワークショップや、上映会などのイベントも行い、その幅広い活動を通して、人々の記憶に残る映像を制作しつづけている。

http://nostos-algia.com